メインメニュー
ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録

2008年3月28日(金曜日)

桜とはじめてのオーナー様

彼は20代の好青年でした。

名古屋からはるばる車で来てくれたのです。

昨日、
掛川の彼女を乗せて、
山里の梅園を訪ねてくれました。

おりしも先駆けの桜が咲きそめ、
白い木蓮が満開の朝でした。

青年は
私の説明に熱心に耳をかたむけ、
花々の美しさを褒め、
古きものに津々たる関心をしめしていました。

裃(かみしも)のことを話していると
「○○絞りですね。
 私は絞りの勉強をしたことがあるんです」
と応えました。

○○のところを、忘れてしまったのです。
はじめて聞く絞りの名前でしたから。

でも、
文化財住宅には、盗難の心配もあって、
あまり良いものは置いてないのです。

それでも青年はひとつひとつのもの、
鉄瓶や炭壺や長火鉢の角の継ぎ目なんかを
目を輝かせて見ていました。

彼女は、
そんな青年をまぶしそうに眺めていました。

晴れた春の日でした。

廊下の陽差しが照りかえして、
純朴そうな青年の横顔や、
まだおさなさの残る女性の瞳に
あわいひかりを映していました。

しかし
青年の純真さは鏡のように、
家を守ることに疲れて
ゆがんでしまった私を写しだしていました。

それに気づいて、
私は悲しくなりました。

会話がとぎれると、
鳥の声と
遠くの川のせせらぎが聞こえるだけになりました。

やわらかな風がきて、風鈴がちいさくなりました。

それはだれも気づかないほど、かすかな音でした。

しずかな時が流れました。

そうしてしばらくして
私のゆがみもなやみも
ゆっくりと溶けはじめ
やがてきえてゆきました。

これで良かったんだと思えるようになりました。

谷合の村で、
古びた家を守り通すことにも、
なにかしらの意味はあるのでしょう。

この青年と少女が、
このしずけさを、
この自然を、
そしてこの古びた家と
それを継いでゆく者たちの物語を、
はるかな旅の果てに
歓びを全身にかがやかせて耳かたむける姿は、
私に生きている意味を与えてくれました。

ありがとう、若きオーナー様。

きょうは山菜があまりなくて、
わずかな時間しかご案内できませんでしたが、
次回は
梅取りの6月上旬になるのでしょうか、
きっと訪ねてきて下さい。

きょうお話ししたように、
山桜も、新緑の谷も、ホタルも、月も、銀杏も、
すべての山里の光景を楽しむことのできるこの地へ
何度でもお越し下さい。

心からお待ちしています。


コメント

このコメントのRSS

TrackBack URL : http://www.e-com-shimada.jp/cell15/modules/wordpress/wp-trackback.php/868

この投稿には、まだコメントが付いていません

コメントの投稿

改行や段落は自動です
URLとメールアドレスは自動的にリンクされますので、<a>タグは不要です。
以下のHTMLタグが使用可能です。
<a href="" title="" rel=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <br> <code> <em> <i> <strike> <strong>


ご注意 : セッティングにより、コメント投稿から実際に閲覧できるようになるまで暫く時間が掛かる場合があります。 再投稿の必要はありませんので、表示されるまでお待ち下さい。

13 queries. 0.028 sec.
Powered by WordPress Module based on WordPress ME & WordPress